研究概要 |
本研究は,今次破産法改正において,立法的手当てが行われた相続財産破産につき,その意義の確認と利用促進を目的として,ヒアリング調査を主眼とした実証的分析を行うものである。民事訴訟法学においては,これまで,限定承認等の清算手続に対する相続財産破産制度の優先性とその利用促進が説かれてきた。本実証研究は,そのような学説の意義をあらためて検証し,今後のあるべき相続財産破産制度を考える一歩とすることを目的とする。 今年度は,まず,日本法に関連する文献,および比較対象であるアメリカ法の文献調査を引き続き行った。複数の倒産弁護士に,随時,インタビューをし,意見交換を実施した。また,奈良県行政書士会の行政書士の方々と,平成22年11月23日において,意見交換の場を持った。平成22年6月12日,倒産法の経済分析研究会において,「アメリカ法における契約の自由と倒産手続」と題する研究報告を行った。平成22年7月10日,大阪倒産実務交流会において,倒産弁護士である稲田正毅氏(共栄法律事務所)と「私的自治の原則と倒産法における限界」というテーマで,共同研究報告を実施し,その成果を,「大阪倒産実務交流会-私的自治の原則と倒産法における限界」銀行法務21724号32頁-43頁(平成22年)に発表した。これらは,倒産法の基礎理論とかかわる項目であり,相続財産破産制度を理論的に分析する上でも,関連性を持ち得るものである。 海外調査として,平成23年3月26日から29日にかけて,ハーバード大学を訪問し,アメリカ法関連資料を収集するとともに,ふたたび,Jesse Fried教授と,アメリカの倒産法の動向および相続財産破産の処理の仕方等について,インタビューを行う予定である。
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