本年度の研究では、平成16年保証法改正(法147号)改正に至る経緯を明らかにし、ドイツとの比較検討を通じて、現在における解釈論を提示した。 そこで得られた知見は次の通りである。まず、平成16年の法改正は、何らかの法的理論を根拠にして行われたものではなく、むしろ、バブル経済崩壊後の金融政策、すなわち物的担保や保証に依存しない融資慣行の確立という政策の一貫として行われたものであった(特に、金融庁のリレーションシップバンキングに関するアクションプログラムの影響が大きかった)。 従って、こうした金融政策の妥当性が検証されねばならないが、現在までの研究状況に鑑みると、保証人を保護することによっても、上記のような融資慣行が確立したとは言い切れず、また、金融、とりわけ中小企業金融の円滑が図られたとも断定することはできない。 それゆえ、保証制度の果たす積極的な役割に着目するという観点から、ドイツの法状況をみると、ドイツの判例法においては、経営者保証と第三者保証が類型的に区別されており、経営者保証においては、第三者保証とは異なり、極度額の定めのない根保証も有効とされており、また、約款規制の一種たる不意打ちや不当な不利益を理由とした保証人保護法理も否定されている。 このような状況に鑑みると、我国においても、経営者保証と第三者保証を一括して手厚く保護するのではなく、両類型を区別した上で、経営者保証にはより積極的な意味を与えてこれを活用し、他方、第三者保証における保証人は今以上に保護するという方向で解釈論を展開する可能性が探られるべきかと思われる。 現在までの研究は、ドイツとの比較にとどまっているが、今後は、フランスなどとも比較しながら、あるべき保証制度の姿を探ってゆきたい。
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