本年度は、ドイツおよびフランスにおける保証人保護のあり方を検討し、それを我国の法状況と比較検討した。そこで得られた結論は、次の通りである。 まず、ドイツにおいては、近親者が多額の債務を保証した場合に、保証契約を公序良俗違反として無効とすること、また、包括根保証人を保護する判例法理の射程が経営者保証人には及ばないことの双方に鑑みると、保証人保護法理の核心は、保証人の私的自治の確保に存するといえる。 次に、フランスにおいては、当初、主たる債務が消費信用、不動産信用である場合の保証人の保護が図られていたのに対し、近時の法改正においては、主たる債務の性質にかかわらず、保証人が個人である場合にこれを保護するものとされるに至った。この法改正の状況に鑑みると、フランスにおいては、個人の過剰債務を防止することが、保証人保護の目的であるといえる。 翻って我国の現状を鑑みると、我国では、平成16年の民法改正により、個人の根保証人の保護が図られたが、これは、経営者保証人の過剰債務を防止するという趣旨だという点において、フランスの保証人保護法理と親和性を有するものといえる。とはいえ、今般の債権法改正議論の内容を検討すると、経営者保証と第三者保証を区別する議論が支配的であり、そこでは、経営者は主たる債務を自ら決定していることが重視されている。それゆえ、経営者保証と第三者保証を類型的に区別して、保証人保護法理を構築するという議論は、ドイツの保証人保護法理と親和性を有するということができる。
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