研究最終年次である本年度(平成23年度)においては、初年度(平成21年度)・前年度(平成22年度)までの検討のさらなる展開・発展に加えて、これまでの3年間の研究の集大成として、以下の諸方面において、研究成果の発表を行った。 (1)現行不登法における登記の真実性の確保・向上現行不登法下において、最高裁は、ついに、真正な登記名義の回復を原因とする中間省略登記請求を否定するに至った(最(一小)判平成22年12月16日民集64巻8号2050頁)。同判決は、中間省略登記否定の断固とした決意を最高裁が表明した画期的な判決と評価できることから、同判決に賛成する評釈を執筆した。一方、表示に関する登記については、所有権証明情報の不備を理由に表題登記の申請を却下した登記官の処分を是認した興味深い裁判例が現れたことから(東京地判平成23年1月20日平成22年(行ウ)第233号)、どのような所有権証明情報を提供すれば申請が受理されたかを検討した。 (2)司法書士会・土地家屋調査士会ADRの現状と課題-司法書士会ADRに関しては、その設置当初の意図と、現在の運用実態につき、神奈川件土地家屋調査士会ADR設置責任者ならびにわが国のADR研究の第一人者とともに検討を行った。土地家屋調査士会ADRに関しては、その設置目的をめぐる問題点や利用率向上の方法等を、土地家屋調査士制度の今後の展望との関係において検討した。 (3)司法書士・土地家屋調査士の専門家責任・倫理問題司法-書士・士地家屋調査士の法律家としての責任ならびに倫理について、これまでの懲戒事例の整理・分析を行った。 (4)土地の滅失の登記をめぐる諸問題さらに、平成23年3月11日の東日本大震災で水没した土地を念頭に、河川区域内の土地の滅失の登記ならびに海没地の滅失の登記に関する現行不登法制度の問題個所を指摘した。
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