1.本研究は、個人の財産や資産およびその管理形態が多様化する21世紀の情報システム社会においては、私法の基本法である民法中の「物」「財産」概念を大幅に見直す必要があるとの認識に基づき、権利の客体を「物(有体物)」に限定せずに、無体物も含んだ「財産」と規定し、わが国の物・物権制度とは異なる展開を遂げたフランス法における財産および財産管理をめぐる法状況を比較法的な手法を用いて分析・検討することを目的としている。 2.本年度は、まずは、財産に関する基礎的研究として、「財産」「所有権」などの基本概念をめぐるフランス法と日本法との比較検討を総合的に行うために、研究代表者(片山)がメンバーの一人として事務局を担当する「フランス物権法研究会」と連携して、日仏各7名の研究者によるシンポジウム「21世紀における所有権および財産-日仏比較研究」(平成22年9月27日28日・パリ第2大学)を企画・実施し、ムスタファ・メキ教授(パリ13大学)をカウンター・パートナーとしてそのための準備を進めてきた。同シンポジウムにおいて、研究代表者は、ニコラ・バンクタン教授(ポワチエ大学)とともに、「無体性と包括性-価値の一般理論をめざして」を報告・討論を行った。同シンポジウムの成果は、ダロズ社(フランス)から単行書として出版される予定である。 3.次いで、財産管理に関する基礎研究として、フランスにおいて充当資産概念を導入した有限責任個人事業者法が施行されたのを契機に、トゥールーズ大学で実施されたシンポジウムに参加し、アンヌ=ロール・トーマ=レオノー同大学講師の報告「充当資産」を翻訳公表した。さらに、トゥールーズ大学からマリ=エレーヌ・モンセリエ=ボン教授(同大学取引法研究所所長)を招聘し、有限責任個人事業者法に関する講演会を実施した(その翻訳を公表する予定である)。 4.本研究の成果は、近い将来に予想される我が国における民法(物権法)の改正に向けての貴重な基盤研究となると確信している。
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