2010年度は、これまで収集にあたったEU倒産規則、アメリカ連邦倒産法および国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)によるモデル倒産法における弁済調整制度(ホッチポット・ルール)に関する膨大な資料の分析、そして検討を開始した。この問題は、欧米では担保権の処遇に関する問題など国際商取引における重要問題とも関連が深いため、資料が非常に豊富である。したがって、この問題に直接関係する成果は、2010年度に公刊することができなかった。 なお、上記の本研究テーマとの関係が深い問題として、執行力の国際的効力をどのように解すべきかという問題がある。わが国では、判決国の執行力を承認国に及ぼすという立場も学説・判例では有力であるが、このような解釈は、ヨーロッパにおける扱いとは大きく異なるものである。このような立場の相違がどのような経緯の中で生じたのかを明らかにすることは、我が国における今後の国際倒産法制の基本的スタンスとの関係で重要な問題と考えている。この点についても、2011年中に紀要などで公にしたい。
|