研究課題/領域番号 |
21530102
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 いつ子 東京大学, 大学院・情報学環, 准教授 (00262139)
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キーワード | 情報法 / インターネット / メディア / プライバシー / 個人情報 / サーベイランス / 技術 / アメリカ |
研究概要 |
四年の本研究期間のうち、前半の二年間に著書刊行や英語論文発表等の作業が当初計画よりも順調に進んだことから、三年目となる本年度は、交付申請書に記したとおり、当初計画の作業に加えてシンポジウム企画にも取り組んだ。すなわち、日米法学会第48回総会シンポジウム「ユビキタス時代の情報法における基底的価値とエンフォースメント」の企画・準備にかかわり、イェール大学ロー・スクールのジェド・ルーベンフェルド教授を基調講演者とし、また関連領域の研究者・実務者を日本側登壇者として、ネット上の匿名性をはじめとする日米英での諸課題に関する個別報告・全体討論を行った(後掲の研究発表欄の学会発表、及び、同シンポジウムの情報として、後掲の備考欄のwebページを参照)。 そこでの登壇者の一人として行った個別報告では、スマート・サーベイランス環境におけるプライバシーのあり方をめぐって、次の二点を明らかにした。第一は、先端的技術がもたらす今日的な問題状況を把握するには、従来のプライバシー・個人情報保護制度における基本的な前提や基底的な価値・原理を改めて問い直しながら、特定個人への権利侵害といういわば〈濃い〉負担に限らず、権利侵害性が微妙な一般社会の多数人に〈広く薄く〉かかる環境型の負担をも視野に取り込む必要があることである。第二は、その問題解決にあたっては、法規制・自主規制・技術的コントロール-教育的措置等の複数の対応手段を、柔軟かつ実効的に組み合せて講じていくアプローチが求められることである(同報告を含むシンポジウムの内容は、日米法学会誌「アメリカ法」に掲載予定)。 なお、本研究成果である拙著『情報法の構造』に対して、昨年度に引き続いて本年度にも賞が授与された(2011年3月・第20回電気通信普及財団賞(テレコム社会科学賞)、同年6月・第3回内川芳美記念マス・コミュニケーション学会賞).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前掲の研究実績の概要欄に記したように、研究計画調書に記した成果発表のための作業が当初の予定よりも順調に進み、関係学会での国際シンポジウムの企画・準備と報告等も行ったこと、また、著書・論文・シンポジウム等の一連の成果が高い評価を受けていること等から、本研究の目的の達成度は高いと言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、前掲の研究実績の概要欄及び現在までの達成度欄に記したように、当初の計画以上に順調に進展していることから、研究計画の大幅な変更の必要性や研究遂行上の問題点はないと考えられる。そこで、四年間の研究期間の最終年度となる来年度も、研究計画調書に記載した内容と方法を基盤としながら、本研究をさらに充実させて発展させていくこととしたい。
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