EUが難民等の受け入れに関して、責任や負担の分担をEU以外の国とどのように進めていこうとしているのかを明らかにするという全体の研究計画の中で、本年度はEUへやってくる難民等の主要な出身地域の一つであるアフリカに焦点をあてて調査を行った。折しも2011年は、「アラブの春」による北アフリカからの人の流出、ソマリア地域の干ばつによる東アフリカの難民問題の増加など重要な出来事があった。 北アフリカからの人の流入は、EUの中でもイタリア・マルタの負担をさらに増加させるものであり、この出来事によりEU域外で難民審査を行うという域外審査の議論が再び活発になってきた。申請者は、この問題を調査するために、9月及び10月にブリュッセルで開催された域外審査に関するシンポジウムへの出席、さらに、マルタにおける難民問題に関するシンポジウムへの出席及びマルタの難民キャンプを訪問し情報を収集した。それらの調査の過程では、EU委員会の担当責任者が、EUがアフリカ地域で進めている地域保護プログラムに大きな期待を寄せていることも分かった。 そこで、2月には、実際にソマリアからの避難民によってもっとも影響を受けている国であるケニアにおいて同国の難民局等を訪問し、同国の難民受け入れ状況や他国による支援の状況に関しての調査を行った。同国は、EUがタンザニアに続いて地域保護プログラムを計画したアフリカの国である。難民受け入れの大きな負担を負ってきたために、UNHCRや国際NGOの力にたよるところが大きく、難民保護に関して、政府や地方当局、ローカルNGOの役割が弱体化してきたという点で、両国は共通点をもつ。しかしながら、現在恒久的解決に向けての政策を進めている段階のタンザニアにおいては、対象国の保護対応力向上を目指すEUの地域保護プログラムはある程度の成果をあげていると評価できるのに対して、現状のケニアにおいてはより緊急な課題への対処に迫られていた。 今年度の研究では、EUにとっての対外的な庇護政策の重要性とその中心要素である地域保護プログラムの重要性が認識できたと同時に、緊急援助との両立性という課題も理解できた。
|