研究概要 |
1 研究目的:本年度の研究課題として、政治学・政策過程論のパースペクティブの下、先駆自治体の温暖化対策を促進・阻害する要因を探求した。 2 分析の視点:自治体政策過程においては,CO_2削減効果や再生可能エネルギー普及効果に優れる先駆策が、誰によりいかに提案・受容され(「アジェンダ化」の視点)、実際にどのような施策として具現化しているのか(「制度化」の視点)。このような、2つの位相からなる動学的な問題関心の下、本研究では、東京都・長野県・岩手県・八戸市・葛巻町の政策過程を分析素材としたケース・スタディの成果から、帰納かつ事例横断的に導出可能な知見を用いた定性的分析を行った。 3 調査手法:ケース・スタディにおける情報収集作業は、主に、関係アクター(県庁・市役所等職員、町長、審議会委員、環境NPO、公募市民、企業関係者、学識経験者など)への対面による聞き取り調査、および、自治体・調査対象者提供の公開・非公開資料を含む文献等調査に依った。 4 主たる分析成果:上記自治体においては、グリーン・ニュー・ディール的な政策観(「環境」と「経済」の両立による、より自律した地域社会経済システムの創発)が志向・先取され、2000年前後といった早期より、各種先駆策の導入・実施が試みられてきた。が、しかし、東京都のケースを除き、各自治体で企図された通りの政策パフォーマンスは発揮されていない状態にある。首長や地元有力者(いわゆる、地元エスタブリッシュメント)による権力的なコミットメントがアジェンダ化の促進要因となる一方、先駆策を制度化する過程では、国の補助金といった域「外」要因の規定力が強いことや、理念条例の制定や他の自治体の(実効性を欠く)施策の模倣といった手法が多用されることなどが、先駆策推進に欠かせない域「内」アクターのコミットメントをかえって減退させるなど、政策過程における合意形成上の阻害要因となることを明らかにした。
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