本研究の2年目に当たる2010年度は、貧困問題をめぐってのフィリピン国内における政治的対応について、政府と市民社会の関係に重点を置いて検討してきた。 第一に、海外ドナーの影響を受けたフィリピン国家が、国内において市民社会や社会諸勢力との関係をどのように調整しながら、いかなる対応をしてきたかという問題を、貧困問題および税制改革を中心に検討した。その成果の一部は、論文、Foreign Donors and Philippine State : Policy Convergence and Domesticationとしてまとめ、海外雑誌に投稿し現在査読を受けている段階にある。 第二に、貧困政策をめぐってフィリピン国家が、市場やNGOなどの新社会勢力、さらには伝統的に強い影響力を保持している政治エリート層とどのような関係を持っているについて検討した。この課題に関連しては、自身が開催と運営にもかかわったThe Second Philippine Studies Conference in Japan(つくば市、2010年11月13-14日)において、フィリピン政治に関するセッションをオーガナイズした。そこではフィリピン大学教授Eduardo Tadem氏、西オーストラリア大学教授Michael Pinches氏を、本プロジェクトの協力研究者として招聘し、さらには京都大学日下渉助教の協力を得ながら共同報告をおこない、内外の研究者からの意見を仰いだ。太田自身は当セッションにおいてペーパーPoverty Policies and the Philippine Stateを発表した。今後同内容に関連する雑誌論文としてまとめる予定でいる。 第三に、市民社会の貧困に関する具体的活動と、国家と市場、特に後者の市場がいかなる関係にあるかについて、マイクロファイナンスの実践に焦点を当てて検討をした。その成果の一部は論文「商業化するマイクロファイナンス-フィリピンでの普及と貧困問題」として雑誌に掲載された。
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