研究概要 |
昨年度より、取引各社の運航関連データを用いた定量的分析により「非効率的発着枠利用仮説」の検証を行っているのだが、その成果は、本年度、The 2010 (14^<th>) World Conference of Air Transport Research Society (ATRS), University of Porto, July 7, 2010において報告されたのち、Journal of Transport Economics and Policyに投稿され、現在、査読中である。 その後、EUについても米国と同様に発着枠取引および発着枠利用の効率性に関わるデータを入手できることが判明した。そこで、本年度は、当初の研究計画には含まれていなかったが、EUについて、反競争的発着枠取引仮説と非効率的発着枠利用仮説の検証を行った。発着枠利用の効率性については2008-2010年のデータを分析したのだが、米国の結果とは対照的に、EUにおいては、発着枠に制約のある空港における発着枠利用は、その他の空港でのそれに比べて、必ずしも非効率とは言えないことが回帰分析により明らかになった。これに対して、発着枠取引の分析(2007-2009年のデータが対象)においては、互いに競争関係にある航空会社間では取引が行われにくく、むしろ、提携会社間で積極的に取引が行われる傾向にある、という結果が得られた。以上より、EUにおいては、発着枠利用の効率性を維持しつつ、取引の競争性をいかに高めていくかが今後の重要な課題であることが分かった。この研究成果は、2011年6月-7月に開催されるKuhmo Nectar Conference on Transportation Economics 2011で報告される予定である(アブストラクトは採択済)。
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