23年度は、これまでの研究をさらに進めるとともにそのまとめを行った。 1「脱近代パラダイムの思想研究」…22年度に行った拠点形成研究報告を基にこれまでの私の研究をまとめて、「脱近代パラダイム転換」を共著『将来世代学の構想』(九州大学大出版会、24年3月)の一部として発表したが、同書の学際的試みは新聞書評欄でも紹介・評価された。 2「脱近代の思想と共同性の思想研究」…共同性と自我の問題について、22年12月に出版した『虚子と現代』が、23年4月に第11回山本健吉文学賞・評論部門を受賞し社会的評価を得た。また、23年3月に「虚子における『自由』」(「熊本法学」査読あり)を発表したが、これに続き23年8月には正岡子規の共同性の基礎を探る「子規における近代性の構造」(「熊本法学」査読あり)を発表した。 さらに、共同性の思想的基礎について原理的に考察し、「宗教と文学」(「道標」人間学研究会、23年9月)を発表するとともに、高浜虚子を素材に「虚子文学における自力と他力」と題して、国際学会(台湾日本言語文芸学会、台南、長栄大学、23年12月)で招待講演を行って、評価された。これは、近く同学会紀要(査読あり)に掲載予定である。 3「共同性と地域の研究」…23年度は、共同性と地域形成について共同研究での知見も踏まえて第7回熊本大学学際セミナー「ポスト3・11から新たな行動変容を考える」(熊本大学24年3月)を開催しシンポジウムの座長を務めその報告書(62頁)も出たが、これは今後の学際研究にとって意義深い。 4本研究の総括…23年度の研究終了に伴って、以上1~3を科研費報告としてまとめる(24年5月提出)とともに、そのまとめの一部として、とくに子規の共同性の問題に焦点を当て『子規と現代』(ふらんす堂)というテーマで24年度熊本大学出版助成を得たので、24年10月に刊行予定である。
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