本年度(平成23年度)は研究計画3ヵ年の最終年にあたり、欧米諸国で日本と同様に二元代表制を採用している基礎的自治体における民意の反映について、これまで実施してきた議員アンケート調査の補足と日本の複数の基礎的自治体において議員アンケート調査の実施し、それぞれ集計をおこなった。アメリカのシアトル市(当初ボストン市でアンケート調査を実施したが事情によりシアトル市に変更)、イギリスのロンドン・ルイシャム、ドイツのフライブルク市、スイスのチューリヒ市といった基礎的自治体を対象としてきたが、いずれの自治体においても市議会は「政治的意思決定」「住民意思の代表」が「最も重要」な機能であり、市議会議員は「市を代表」「選挙区を代表」するという回答が多かった。その一方で、意思決定過程での重要なアクターについては、「有権者」「市議会(議員)」「市長」と自治体によって回答が割れる結果となった。また、住民投票についてはいずれの自治体においても肯定的な回答が多かったが、直接民主制が定着しているスイス・チューリヒ市では「住民投票の結果が市議会の議決に優越するのは当然である」と回答者全員が答えていたことは特徴的であった。さらに、本年度は統一地方選挙後に日本の3つの自治体(東京都渋谷区、熊本県水俣市、滋賀県大津市)でも議員アンケートを実施した。ここでは「直接民主制について」の質問に対する回答は、3市とも肯定的なものが過半数であったが、その中では非常に積極的な意見と慎重な意見とに分かれた。今回の研究に際して実施した調査からは、議員は住民の代表という意識を持っており、住民の意思決定への参加についても積極的な意見が少なくない、という結果が得られた。ただし、それがどのような背景によるものなのか、議員と首長とでは政治的意思決定に関する住民の参加に対する意識の相違があるのか否かについては、残された課題である。
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