研究概要 |
本研究では、政府部門(地方政府及び中央政府)における人的資源管理・配置について、実証的に検証しようとした。 21年度はまず、オーストラリア連邦政府および2つの州政府を訪問した。日本でいうような出向官僚は皆無であり、自治体間あるいは自治体と中央政府を移動する場合、いったん退職せざるを得ず、年金制度の障壁が大きい。 22年度はカリフォルニア州政府および州内の5つの自治体を訪問した。Calpersという加州自治体内自治体にほぼ共通の年金制度があるため、域内での人的交流は活発である。地方、Calpersに入っていない自治体(サンフランシスコ市)との行き来は少ない。英国の数か所の自治体も訪問したが、英国には共通の年金制度が存在し、それが自治体間の移動を容易にしている。 23年度は、ニュージーランド政府およびウェリントン市などを訪問した。ニュージーランドでは、米国や豪州のような手厚い公務員年金制度はなく、キウイセーバーという基礎年金にあたるものだけに加入している自治体が多い。そのため転職は頻繁に起こり、職員の引き留めに苦労しているとのことであった。また、ウィスコンシン州、アリゾナ州にも訪問し、上述の米国の実態での追確認を行った。 以上のような調査結果から考えると、年金制度が政府間の人材流動性に大きな相関を有していることがわかる,日本の場合は、退職金制度の通算制度がないことが自治体間の人材流動性にブレーキをかけている。(国家公務員の場合は、出向先での自治体では退職金を受け取らずに本省に戻るため、実際上、通算して50代で辞職するときに支給される)。 ガバナンスの変容が人的配置に影響を与える度合いよりも、年金や退職金の制度の方がより強い影響を与えていることが推論できた。今後は、これをより実証的・計量的に明らかにする研究を続けたい。
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