本年度は、主として研究発表を行った。特に本年度においては、アフラシア平和開発研究センターからワーキングペーパーの形で出版していた、「Nishida Kitaro and Japan's Interwar Foreign Policy : War Involvement and Culturalist Political Discourse」を大幅に加筆・修正した上でオックスフォード大学出版から発行されているSSCIジャーナルであるInternational Relations of Asia-Pacificに投稿した。この論文は国際的なPeer Reviewを経た上で2011年1月の第11号第1巻に収録.刊行された。この中では、京都学派の構成主義がどのような理由から戦争協力へとつながっていったかという点を明らかにし、これが現代の国際関係理論における構成主義にどのような意味があるのかという点に言及した。また、ライデン大学のJay Han教授の編集によってイギリスのRoutledgeから刊行予定の「Cultural Resistance」に掲載予定の論文では、日本における文化論や民俗学の展開が現代日本のソフトパワー外交とどのように繋がっているのかという点に言及した。 本プロジェクトの2年目までの研究において上記のように京都学派の構成主義理論についての一定の研究成果が出たことから、さらに研究を展開することも兼ねて京都学派左派の議論、すなわち三木清や戸坂潤の議論についての検証を始めた。この点については3年目を通して研究を展開したい。
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