研究課題
2009年度は研究計画の初年度として、中東欧諸国の福祉レジームの基本的な特質を明らかにするため、中東欧諸国の福祉枠組みの現状に関する調査と、その成果を元にした中東欧諸国の間での比較分析を実施した(ただし実施計画では対象に含めるとしたブルガリア、ルーマニア、およびクロアチアの3ヵ国については、まだ福祉関連の資料が十分に整備されていないことで調査を2010年度に延期し、今回は2004年にEUに加盟した8ヵ国を主たる分析対象とした)。今回は主として年金制度、医療制度、育児支援制度を主たる対象とした分析を行い、そこから中東欧8ヵ国の福祉枠組みについては、全ての市民に対してある程度包括的な福祉を提供するエストニア・ラトヴィア・スロヴェニア、古典的な男性稼ぎ手モデルに依拠した男性の労働と女性の在宅育児を基本とするチェコ・スロヴァキア、福祉の対象が低所得者層を中心とする残余的なリトアニア・ポーランド、そして中間層への支援は厚いが低所得者層の保護が不十分なハンガリーという、おおまかな類型化を行うことが可能なこと(そのため中東欧諸国の福祉枠組みを「ポスト社会主義福祉レジーム」としてひとくくりに扱うことはできないこと)、および同じ社会主義型の福祉枠組みからこのような多様な形の福祉枠組みが形成された理由として、体制転換期の各国の政党政治、特に主要な政党と、これと結びついた労働組合の福祉に関する意向の相違が影響を与えている可能性が高いことを明らかにした。このような形で中東欧諸国の福祉枠組みめ多様化を明確に整理した文献はまだ世界的にも例が少なく、特に今回英語で公表したペーパーは今後この領域の研究における先行研究となるものである。
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Post-Communist Transformations : The Countries of Central and Eastern Europe and Russia in Comparative Perspective
ページ: 145-178
http://www.seinan-gu.ac.jp/~sengoku/poland-eu/
http://www.seinan-gu.ac.jp/~sengoku/database/