超国家・国家・地方政府の3層の領域的行為体による統治モデルに加え、EU統合深化の中で新しい政策容器「メゾリージョン」が登場し、規範の異なる行為体・ステークホルダーがガバナンス形成に参加する「規範包括的ガバナンス」が立ち上がり始めている。この"メタガバナンス"の政治統治形態モデルの成立プロセスを検証するために、まず、英国アバディーン州政府による戦略的なガバナンスコーディネートと規範誘導、すなわち地方政府が国家スケールを飛び越す「越層行為」を明らかにした。 それを受けて本年度は、メゾリージョンレベルのガバナンスの検証を目的として、EU地域委員会(CoR)フォーラム(2010年4月13日、ベルギー・ブリュッセル)と北海地域諮問評議会(NSRAC)年次総会(2010年10月21日-22日、英国・アバディーン)に出席し調査を行った。現在、EUの地域政策分野において、バルト海地域・ドナウ川流域・北海地域といった国家を政策容器の基礎単位としない"挟空間"「マクロリージョン」の領域的協力が進められており、「マクロリージョン地域協力の憲章」とも言える『戦略』の策定が行われている。ここでは、マクロリージョン独自のガバナンス形態を調整する様式であるメタガバナンスが、国境を逸脱し、国家スケールを逸脱し、国家という行為体の種をも逸脱した包括的海洋ガバナンスの様式であることが明らかとなった。
|