理論面で、国際政治学区領域で近年着目されている、制度間コンフリクトの議論の発展段階とその問題点を考察するとともに、国際法の領域でILC(国際法委員会)を中心に議論されている法の断片化の議論との異同についても検証を行った。そして、実際の制度間コンフリクトの解明事例として、(1) 2010年にクロマグロをめぐって、地域漁業機関ICCATとワシントン条約(CITES)の重複関係(2)生物多様性条約の第10回締約国会議において議論されるかに思われた国家管轄権領域を超えた海洋保護区が結局議論されないままに終わったのがなぜか、その決定が行われたプロセスと理由について検討した。事例の検討を通して、制度間の調整にあたっては、必ずしも大国のパワーが機能するわけではないこと、フォーラムショッピングを行うことによって、それぞれの制度で数の優位に立つ途上国がこれまでの先進国に有利に形成されてきた海洋政策の見直しを迫る契機となっていることを指摘した。制度間コンフリクトの問題は、内外問わずほとんどの研究において環境問題が事例として扱われていることから、今後、さらに事例の領域を広めて上記のことが検証できるかどうかが課題であると思われる。
|