1. 分析枠組の構築と研究方法の確定:本研究では、ネオリアリズムが強調する「国際システムの圧力に起因する模倣(emulation)」と、社会学の新制度論が注目する「組織の同型化(isomorphism)」を基本として、さらに、革新の伝達メカニズムや、同盟国による受容の促進・阻害要因に応用できそうな国際関係理論の最新の成果も取り入れて、戦力変革の国際的な伝播に関する分析枠組を構築した。研究方法については、公文書収集とインタビュー調査を基に、米軍変革の同盟諸国への伝播に関する「過程追跡(process tracing)」を実施することにした。 2. 米軍変革に関する研究:研究設問のうち、次の二つに焦点を当てて、実証的研究を進めた。A)冷戦後における米軍変革とはなにか。B)米軍変革は、どのようにして同盟諸国へ伝播してきたのか。 まず、本テーマにつき、数多く存在する先行研究を批判的に再検討した。次に、日本で入手可能な一次資料(米国国防総省の年次報告書、Joint Vision 2020など)を収集して分析した。その際、分析対象には、米国国防総省における「軍事技術革命(RMA)」概念と「防衛変革」概念の変遷、経済界での慣行の影響、統合・共同作戦に関する変革、計画・企画・予算過程への影響、各軍種(陸・海・空軍)での変革などの諸側面も含めた。なお、平成21年度末に米国で実施する予定であった資料収集・インタビュー調査は、インタビュー対象者の都合上実施できなくなったため、平成22年度末に実施した。
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