研究課題/領域番号 |
21530147
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
宮岡 勲 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (90335399)
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キーワード | 安全保障 / 同盟 / 戦力変革 / 伝播 / 国際情報交換 / 米国:英国:豪州:日本 |
研究概要 |
平成23年度においては、米豪同盟と豪軍の変革に関する研究に重点を置いた。年度を通じて、関連する先行研究のレビュー調査と日本で入手可能な一次資料の収集・分析を行った。また、年度末には、豪州のキャンベラへ調査旅行に行き、国防大学、国立大学、および戦略政策研究所において聞き取り調査を実施するとともに国立図書館で資料収集も行った。 本年度に実施した研究において特に重要と思われる成果は次のとおり。 ・米軍変革は、どのようにして同盟国である豪州へ伝播してきたのか。 1990年代から米国の国防総省ネット評価室や、戦争大学、戦略予算評価研究所(CSBA)の専門家との交流(キャンベラでの国際会議を含む)を通じて、米国のアイディアの影響があった。豪州の国防省内に1999年に設立されたRMA室が軍事革命的な技術の一部を同国の事情に合わせる等の役割を果たした。ただし、国防省がRMAに本格的に取り組むようになったのは2002年になってからである。関連する戦略構想や戦力計画に関する文書が出されるようになった。2005年以降は、「ネットワーク中心の戦い(NCW)のロードマップ」が隔年毎に発表されるようになった。戦力変革の実施段階に移行したと考えることができる。 ・豪州による変革の受容は、なぜ促進(あるいは阻害)されてきたのか。 同盟国である米国の軍隊との相互運用性を高めるという観点が変革受容を推進してきた。他方で、2003年ごろから国防組織の関心が対反乱作戦(COIN)に移行したことは阻害要因となった。なお、広大な国土の割に豪軍の規模が小さいことは、変革を受容するにあたって促進要因でもあり阻害要因でもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究計画の一年目の米軍変革に関する研究が計画していた以上に時間がかかり、二年目に予定していたNATOと英軍の変革に関する研究を四年目に先送りしている。また、各年において行う予定であった研究成果の執筆・発表が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、当初の研究計画にあった自衛隊の変革に関する研究だけでなく、平成22年度に予定されていたNATOと英軍の変革に関する研究も行う。その際、研究設問のうち、次の二つに焦点を当てる。 ・米軍変革は、どのようにして同盟国である日本や英国へ伝播してきたのか。 ・日本や英国による変革の受容は、なぜ促進(あるいは阻害)されてきたのか。 この最終年度においては、これまでの研究の集大成として、日・英・豪の事例間の比較と執筆に高い比重を置くことにする。そして、随時、内外の学会・研究会で本研究の成果を発表しつつ、最終的には、学術論文や著書として出版する予定である。
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