本研究の目的は、日本人戦犯の釈放をめぐる戦後日本外交の政策決定とその効果について実証的に分析し、新しい事実を解明することである。 この研究計画を推進するために、第一に、平成23年度は東京における一次資料の調査収集活動を合計4回実施し、その結果、貴重な情報を多数、入手することができた。 第二に、収集した資料については、逐次、解読、分析を加えた。 具体例をあげれば、戦犯釈放の最終段階で、既決戦犯は減刑(この場合、服役した期間までに刑期を短縮すること)による刑期満了というかたちをとることになるのだが、日本外務省は「減刑方好意的配慮」を求める目的を「A級戦犯十名……の社会的地位回復のため」と内部文書に明示している。これは「人道的配慮」といった観点とは異なり、日本政府が戦犯裁判をどのように評価していたかに関わるもので、きわめて重要な問題である。 研究実施計面に提示した第三点は、本研究計画に関連する先行研究等をサーヴェイすることであった。この点については、第二次大戦中の戦犯裁判処罰政策を含む国際人道法、国際刑事法に関して、近年、欧米の研究が多数刊行されているため、これらを対象として本研究計画の客観化と情報追加をはかった。
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