本研究計画は、日本人戦犯の釈放をめぐる戦後日本外交の政策決定とその効果について実証的に分析するものである。 平成24年度は、この計画を実施する最終年度に当たる。年度当初の研究実施計画に示したように、第1に、今年度も従来と変わらず、もろもろの公文書館における一次資料の調査収集活動は重点的に行なわれた。その結果、必要な情報がかなり集まった。そして年度終了間際の平成25年3月に外務省の外交記録が公開され、そのなかに本研究計画にとって重要な情報が多々含まれていたことは実に貴重であった。 第2に、先行研究やマスメディア情報等のサーヴェイと併せて、資料を系統的に整理し、分析を加えた。連合国側は自らが実施した戦犯裁判の刑と正当性を守ることを重視し、日本側は受刑者の早期釈放をめざした。日本人戦犯の釈放過程は、占領期と主権回復後の二つに大まかに分かれる。占領期にGHQの仮釈放制度が創設され、主権回復後もその方式が踏襲される。その両者をつなぐのが、戦犯赦免に関するサンフランシスコ講和条約の第11条であるが、これまで前段の「裁判(判決)を受諾する」という文言の具体的意味が資料的に不明確であった。その点、上記の外交記録には、連合国の戦犯裁判の「国際法上の適法性」について日本側が異議を申し立てず、主権回復後も判決の効力を認め、日本側が刑を執行すると外務省が解釈していたことが示されている。これだけで第11条解釈が決着するわけではないが、従来にない重要な情報であると判断される。 平成24年度の研究計画は、こうした新しい知見の獲得も含めて、予定通りに進められた。その成果の一部は研究代表者の単独論文「戦犯処罰と国際秩序」(平成25年刊行予定『グローバル・ガバナンスと日本』[仮題、中央公論新社]所収)に示される。
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