人種という外交関係研究においては従来あまり議論されてこなかった問題を扱う本研究課題を着手するにあたって、まず初年度においては米国や英国の白人自治領であったオーストラリアやカナダにおける排日移民政策に関る資料・史料収集と学会報告などを行った。こうした米国と英国の白人自治領に共通した「白人優位主義」ネットワークとも言える言説については、主にロンドンの英国国立公文書館、大英図書館、オックスフォードのボドリアン図書館、ウィンザー城英国王立文書館、エジンバラのスコットランド国立図書館、国内では東京大学大学院総合文化研究科付属アメリカ太平洋地域研究センターにおいて移民関連資料を、外務省収集した。また9月には英国ソルフォード大学の国際関係セミナーで、この「白人優位主義」について口頭報告を行い、11月には日本国際政治学会においてこの「白人優位主義」とアジア主義の関りについて成果発表を行った。この学会発表では日本外交史研究を専門とする研究者から多くの有益な示唆を受け、今後の研究発展において大変有意義なものとなった。京都大学、神戸大学、北海道大学、二松学舎大学などでの研究会にも出向き、日本外交史の視点から日英・米の国際関係を考察したり、アジア主義を専門とする研究者との研究交流の機会を得た。英国の外交や国際関係については、英国の外交官を扱った論文、そして、共著の著書『近代イギリスと公共圏』では、公共圏としての英国外交についての論文を掲載、出版した。ゆえに科学研究費は、主に国内外の旅費として使われた。
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