外交関係研究において従来あまり議論されてこなかった人種や宗教の問題を扱う本研究課題を発展させるにあたって、本科学研究費プロジェクト二年目には、英国の白人自治領であったオーストラリアやカナダにおける排日移民政策に関る資料・史料収集と学会報告などを行った。こうした米国と英国の白人自治領に共通した「白人優位主義」ネットワークとも言える言説については、主にロンドンの英国国立公文書館、大英図書館・インド分館、オックスフォードのボドリアン図書館、ウィンザー城英国王立文書館、国内では東京大学大学院総合文化研究科付属アメリカ太平洋地域研究センターにおいて移民関連や外務省の資料を収集した。また9月には英国オックスフォード大学の国際関係史学会で、この人種問題と宗教、文明論に関わる論題で口頭報告を行い、10月に北海道大学で行われた「広域アジア主義」シンポジウムでは、「白人優位主義」とアジア主義の関りについて成果発表を行った。この学会発表には様々な観点からアジア主義を専門とする研究者らが多くおり、特にアジア主義に関わるインド要因について有益な示唆を受け、今後の研究発展において大変有意義なものとなった。東京大学、京都大学、神戸大学などでの研究会にも出向き、日本外交史や外交史研究一般の視点から日英・米の国際関係を考察したり、アジア主義を専門とする研究者とのより盛んな研究交流の機会を得た。英国の外交や国際関係については、英国の外交官を扱った論文'The Cultural diplomacy of Sir James Rennell Rodd'が、Fringe of Diplomacyと題する共著として近日中に出版される予定である。以上のような英国での資料収集、学会発表、出版活動などのため、本科学研究費は、主に国内外の旅費として使われた。
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