本年度は、外務省外交史料館に所蔵されている史料、政府文書などを精査しながら、関連する当事者たちにインタビューを行った。 その内容を踏まえながら、拙著『日中国交正常化-田中角栄、大平正芳、官僚たちの挑戦』(中公新書、2011年)を刊行した。同書では、国内と外国の史料について、保存と公開の状況を示す目録を付し、インタビュイーの一覧を記した。新書でありながらも学術津的な価値を維持すべく努めてある。注を残したのもそのためである。 2011年12月には、日中国交正常化に関する外務省記録が、外務省外交史料館で初めて本格的に公開された。これについて分析を加えたことはもとより、NHK総合テレビ、『読売新聞』、『朝日新聞』、『信濃毎日新聞』などに談話を発表した。 聞き取りに関しては、条約課長、条約局長、外務審議官、駐中国大使などを歴任した中島敏次郎大使インタビューを公刊した。中島敏次郎/井上正也・中島琢磨・服部龍二編『外交証言録日米安保・沖縄返還・天安門事件』(岩波書店、2012年)がそれである。 また、中曽根康弘/中島琢磨・服部龍二・昇亜美子・若月秀和・道下徳成・楠綾子・瀬川高央編『中曽根康弘が語る戦後日本外交史』を新潮社から刊行すべく、準備を進めている。 そのほか、田中角栄の元秘書らにインタビューを行っており、これらは来年度に継続する課題となっている。
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