研究課題/領域番号 |
21530159
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
西村 めぐみ 立命館大学, 法学部, 教授 (50287562)
|
キーワード | 疎外された人口 / PoWプロジェクト / テロリズム / GTDデータ / 統計的手法 / 社会調査 / 内戦の犠牲者 |
研究概要 |
本研究は、政治権力から疎外された社会集団の研究という、現在までの国際政治学であまり扱われていない対象の研究である。また現代的なテーマであるため実証的な資料が少ないが、今日の国際関係に与える影響の大きさを考えると、一つのテーマとして、可能な限り実証的な研究を行うべき分野であると考えている。 平成23年度には2本論文を発表した。1本目は本研究1年目に学会発表した論文を加筆訂正した論文である。2本目は本年4月、シカゴで行われたMidwest political science associationの69回大会で発表した論文を加筆修正したものである。後者の論文はテロリズムという社会暴力が、国家権力からの暴力的手段による排除という要因から生まれる側面が非常に大きいことを議論した。前者の論文はテロリズムの最近の傾向を分析したものである。両研究とも現代の国際関係において、政治権力から疎外された社会集団が存在することになる原因とその結果を分析することを念頭においた統計分析である。 またこうした研究は、当然のことながら詳しい個別の事例研究により補強できるものである。そのため、研究者が詳しい現地調査を行うことが現実的に可能であり、国連、EU,OSCEの資料等を通じて、国家及び社会の主だった行為体の反応を文書で検証可能なバルカン半島の事例研究を加えることにした。今年度は特にアルバニア人少数民族の問題と内戦の危機に直面しているマケドニアを調査対象として選んだ。調査はスコピエで行い非常に短い期間であったが、現地の国際機関の公務員関係者、政党関係者等のご協力をいただき、非常に有意義な調査を行うことができたと考えている。今後は、入手可能な実証的な文書で議論を補強し、政治的権力から疎外された人々をどのように国家や社会に再統合していくかという問題意識に研究をつなげていきたいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、最終的には単著としてまとめる予定である。その内容は、理論的枠組み、政治権力から疎外された集団を生み出す原因、結果の計量的研究と事例研究、及びこうした集団を政治過程に再統合する政策を研究することである。この内、実証的研究の部分については、すでに数回にわたり海外で学会報告を行い、2本論文を発表した。また2-3本の論文を近く発表したいと考えている。この予定は当初考えていたものであり、本研究は、おおむね順調に進んでいると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は、本研究の最後の年となるので、本研究の最終的な目的であった単著を仕上げる予定を固める年としたい。現在までは、政治権力から疎外された人口が存在するようになる原因要因とその効果を主に分析していた。来年度は、こうした集団を国家と社会へ再統合させ、社会的な暴力が発生しないような政策手段を分析したいと考えている。全体として、将来計画している著書は、分析の枠組みと計量的な実証研究の部分と事例研究、最後に政策分析から成るものとすることを考えている。
|