研究概要 |
平成22年度は、持続可能な社会的厚生関数に関する最近の研究成果のサーベイを行った。社会的厚生関数とは,各世代の福祉指標の無限流列の評価基準を実数値関数で表現したものをいう。Asheim,Mitra and Tungodden(2011,forthcoming in Economic Theory)は【持続可能性】と【再帰性】を満たす社会的厚生関数が存在するための必要十分条件を,【順序公理】,【制限された連続性】,【将来からの独立性】,【単調性】,【将来世代に関するハモンド衡平性】によって特徴づけた。Alcantud(2011,forthcoming in Journal of Economic Theory)は、以下の三つの不可能性定理を証明した。(1)【ピグー=ドールトン移転公理】と【弱パレート】を満たす社会厚生関数が存在しない。(2)【ハモンド衡平性】と【弱パレート】を満たす社会厚生関数が存在しない。(3)【将来の独立性】、【将来世代に関するハモンド衡平性】と【弱パレート】を満たす社会厚生関数が存在しない。【ピグー=ドールトン移転公理】は、豊かな世代から貧しい世代への効用の移転による効用の格差の縮小がよりよい社会状態を生み出すことを要請する。【ハモンド衡平性】は、豊かな世代と貧しい世代の間の効用の格差の縮小がよりよい社会状態を生み出すことを要請する。【将来世代に関するハモンド衡平性】は、【ハモンド衡平性】と【ピグー=ドールトン移転公理】のいずれよりも弱い要請である。Alcantudの不可能性の結論からの脱却の道を探るが次年度の課題である。
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