研究概要 |
1)私的観測と長期的関係については、既存の研究結果であるbelief-free均衡をさらに拡張し、頑強性のある、より効率的な均衡の構成方法についての研究成果を、査読付き学術雑誌Econometricaに投稿し、revise and resubmitの返答を受けた。これについての改訂作業を行った。さらに、私的観測と長期的関係のより一般的分析を切り拓くbelief-basedアプローチに関して、UCLAの小原一郎氏を招聘して共同研究を行った。この共同研究を通じ、オペレーションズリサーチで開発された手法が有用であることが発見され、あらたな一般理論の構築の見通しがついた。 2)マーケットデザインについては、小島武仁氏(スタンフォード大学)安田洋祐氏(政策研究大学院)との共同研究を行った。この関係から、小島氏を招聘し、共同研究を進めた。一つの研究プロジェクトは、安定マッチングの構造を優モジュラーゲームとの関連で調べるもので、Hatfield et al(2005), Ostrovsky(2008)を包摂する、一般性の高い理論分析が、安定なマッチングをナッシュ均衡で実現するゲームを通じた研究によって明らかになった。また、もう一つの研究として、「マッチングに参加する者が類似した選好を持つ場合、安定マッチングの数が小さくなる」という、よく知られているが証明が未だ与えられていない予想を肯定的に解決する一応の結果を得た。 3)さらに、長期的関係と協調の関係を理論家するくり返しゲームモデルと密接に関連する、あらたな「改訂ゲーム」というモデルを開発し、関係が1回で終了する場合にも戦略の改訂の機会があれば協調が達成できることを明らかにした。研究2,3については第一稿を完成させた。研究3については、国際学会であるInternational Conference on Game Theory (July 16, 2009, SUNY at Stony Brook), Far East and South Asia Meeting of Econometric Society (August 4, 2009, University of Tokyo), Conference on Evolution of Cooperation (September 17, 2009, International Institute for Applied Systems Analysis, Austria)の招待講演として発表した。 さらに、長期的関係と協調のゲーム理論を経済史に応用したアフナー・グライブの研究書の翻訳を刊行した。
|