2009年度中の最大の成果は"Uncertainty shocks and financial intermediation in a dynamic general equilibrium model : a Markovian Jump Linear Quadratic Approach"を著し、これをヨーロッパ最大の学会であるEuropean Economic Associationコンファレンスで報告したことであった。 この論文は「不確実性ショック」すなわち生産性に関する不確実性の増大が企業の投資行動を消極化させることを通して経済成長にマイナスとなりうることを示した。さらには同時に家計の流動性資産需要が拡大することがさらに成長にとってマイナスとなりうることを示した。この論文は学会で高い評価を得、多くの有意義な意見交換の機会に恵まれた。その中でもマクロモデルの数値分析の分野では第一人者の一人であるMichael Reiter氏から得たコメントをもとに、現在は新しい理論モデルを構築中である。また「11.研究発表」欄にあるように、多くの理論・実証論文を特に確率的動学的一般均衡(DSGE)モデルの関係で著し、積極的に研究報告を行い、多くの研究者と意見交換を行った。 特にソウルの延世大学で報告した"Effects of external and fiscal policy shocks in Japan"は開放経済DSGEモデルを日本のデータを使ってベイズ推定した論文であり、非常に新しい貢献といえる。これらので研究で蓄積された経験を2010年度に活用していく予定である。また、高齢者家計の資産選択の問題を、特に不確実性に対する態度との関連で計量経済学的に分析した。この論文は完成に近い状態であり、2010年中には翁邦雄・北村行伸編著の書籍の1章として出版される予定である。
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