平成22年度中は不確実性増大と経済政策に関する理論・実証研究を継続させた。実証研究においては家計レベルのミクロデータを用いた、不確実性下の家計による資産選択に関する研究をほぼ終了させた。この研究の新しい点は高齢者家計に焦点をあてたこと、遺産動機の有無による行動の違いを分析したことである。理論研究においては新しい数値分析の手法を用いた、不確実性増大がマクロ経済にもたらす影響についての研究をさらに深化させた。また、不確実性下における開放経済モデルを用いたマクロ経済政策効果の評価に関してのこれまでの研究結果をまとめた論文を執筆し『経済研究』にて公刊した。またその後の研究に基づく最新の結果を日本金融学会秋季大会のパネルディスカッションで紹介した。さらに研究を進め、最新の成果をマクロ計量分析研究会で報告した。またこれと関連して、為替レートや原油価格のパススルーに関する実証分析の結果を『フィナンシャル・レビュー』や書籍の1章として公刊した。平成22年度中の大きな成果としては2008年から2009年のグローバル金融危機時にマクロ経済の不確実性が非常に増大した下での日本の輸出・生産の動きに関する実証研究を行ったことが挙げられる。特に自動車産業の動向に焦点を当て、不確実性下の在庫の役割を強調した。この研究はすでにワーキングペーパーの段階にあり、いくつかの研究会で報告を行った。この他、アジア諸国における過去の資本蓄積の決定要因を分析し、2030年までの将来予測を行った研究を報告し、論文を学術誌に投稿した。またデフレ下の金融政策に関する討論に参加し、その成果が書籍の1章として公刊された。
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