平成22年度の研究成果に基づき、2人のプレーヤーによって行うチーム生産において、リーダーシップが個人の情報にどのように左右されるかを、ゲーム理論的に明らかにするため (1)利得関数が2次形式の下で (2)チーム生産性の2通りの可能性に関するシグナルが、ある分布に従って選ばれたシグナル精度の下で実現し (3)それから各プレーヤーが、2時点のうち好きな方の時点で、チーム生産のための努力投入を行うゲームを研究し、(2)のシグナル精度の分布を確率優位関係によって変更したとき、このゲームの逐次均衡でのリーダーシップ確率を比較した。数値計算による分析の結果、均衡点が複数存在し、比較静学分析の結果が均衡点に依存して複雑となることが判明した。 他方、この理論研究をデータ面からサポートする研究の成果である論文(後掲学会発表論文その2)で発見された「たとえ私的情報のシグナリング効果が意味をなさない場合でも人はリーダーシップ行動をとることがある」という事実に対し、これまで研究に用いてきたシグナリングモデルに修正を施す必要性が指摘された。この指摘に答えて、上述(1)(2)(3)のモデルの拡張可能性を研究した。具体的には、チーム生産ゲームが直面する社会的ジレンマのプロトタイプとしての囚人のジレンマを取り上げ、(2)のシグナルを取り除いてシグナル効果の影響をなくした上で、(1)の利得関数に社会的選好を導入した改訂モデルをつくった。このモデルについて、数値計算による分析をおこなったところ、社会的選好に関する非完備情報の下でリーダーシップ均衡が存在しうることがわかった。ただし、均衡が複数存在し、比較静学分析の結果が均衡点に依存して複雑となる、類似の事実が見られた。(後掲雑誌論文及び後掲学会発表論文その1)
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