研究概要 |
本年は,渡辺と山下が各段階の成分ゲームが戦略的補完性を持つ場合のマルコフゲームについての分析を引き続き行った.優対角条件を外して均衡点の唯一性を放棄することで研究を行った.その結果,戦略的補完性の下では均衡点が束構造を持つことから最大元(または最小元)が存在する事を示し,唯一の均衡点の代わりにこの均衡の最大元で同様の性質が得られることを証明した.本成果は,現在,International Journal of Game Theoryに現在投稿中である. また渡辺は,引き続き複数財のオークション(特に組合せオークション)と戦略的補完性の関係についても検討した.本年は,まず財の集合を導出順序(induced order)で順序付けをし,その順序に基づいてオークションが戦略的補完性を持つことを示そうとしたが,その関係は見出せなかった.ただし,この過程において第1価格入札的な組み合わせオークションの均衡に離散不動点定理が応用できる可能性を発見し,離散不動点定理をゲーム理論やオークションに応用する研究を進めている.この研究は現在も継続中である. 渡辺は,競争状況下でのリアルオプション分析におけるシグナリングについて考察し,研究成果をまとめた.具体的には.投資の先導者が,投資効果について情報を持っており,先導者の最適な投資タイミングで投資を行うと情報が追随者に顕示してしまうシグナリングの問題を考察した.本研究は,2つのDiscussion Paperにまとめられ,海外の学会などで発表されている.
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