研究概要 |
現代の社会や経済のさまざまな局面で経済主体が一対一のペア間で協力関係(リンク)を作り,結果として協力関係のネットワークを形成していくことがある.例えば,OSなどを通じたユーザーとコンテンツの接続,企業間の研究開発,国際間のFTAなど挙げることができる.経済主体のペアがリンクを形成するインセンティブはリンクやネットワークへの参加によって得られる外部性も含めた利得とリンクの形成と維持に伴う費用の2つに依存する.これらの基本的な考え方をベースに,2009年度はプレーヤー間の非対称性とリンクに生じる直接的,間接的外部性の効果について分析を行った.2010年度はこれまでの研究を踏まえ,2つの研究を集中的に行った.1つはシミュレーションによる分析である.プレーヤーの数を3~5に限定した上で,リンク接続の費用,プレーヤー間の非対称性の程度,直接・間接的外部性の程度を変化させたときに実現するネットワークの変化と,効率的なネットワークとの乖離の変化について分析した.もう1つは両面性市場とプラットフォームの分析への応用である.例えば,パソコンのOSはOSとコンテンツ,またはOSとユーザーがリンクを結ぶことでネットワークを形成している.また,ユーザー間,コンテンツのプロバイダー間,そしてユーザーとプロバイダーとのあいだに直接・間接のネットワーク外部性が生じている.リンク形成のインセンティブはOSのようなプラットフォームの価格・非価格戦略に依存しており,プラットフォームの提供者がネットワーク外部性をコントロールしながらどのようなインセンティブを与え,またどのようなネットワークが実現するのかについて分析した.
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