研究課題
通常の独占理論は需要曲線に関する情報が完全かつ瞬時に得られることを前提にしているので、独占企業は利潤最大化を実現する生産と財の供給に一致する需要を生み出す価格設定を行うことが出来る。しかしながら現実経済では完全な情報を得ることは難しく、得ることが出来るとしても多大な費用がかかる。また情報はある程度の遅れを伴っている。この様な不完全かつ遅れのある情報しか得られない場合には、利潤最大化を必ずしも実現できず、何らかの調整を行う必要がでてくる。以上の点を考慮して、独占企業の動学理論を構築することを試みた。連続時間モデルを想定し、財需要に関する固定時間遅延、連続分布時間遅延の存在が定常点(利潤最大点)を不安定化させ、極限循環や複雑な動学が生み出されるメカニズムを数理的および数値的に考察した。具体的には1)一つの固定時間遅れが存在する場合には、遅延の大きさに対応して安定性から不安定性への転換(Stability switches)の起こる条件を明示化した。さらに非線形性が強い場合にはHopf分岐を経て極限循環がえら得ることも示した。2)二つの固定時間遅れが存在する場合には、Stability switchesに加えて、カオスを含む複雑な動学が生み出されることを数値的に確かめた。次に、固定時間を一つの極端なケースとして含む連続分布時間遅れ置き換え、上と同様に、3)一つの連続分布時間遅れがある場合には1)と同様にStability switchesが起こり、Hopf分岐を通じて循環解が発生することを示した。4)動学方程式が二つの連続時間遅れがある場合には、変動は複雑になり、有限回のStability switchesが起こることも示した。情報の遅延は経済動学モデルにおいて様々な動学を生み出す源泉になっていることが示せた。
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