研究概要 |
1. 人間の思考についての数理的分析.数理的な活動において重要な働きをする「極限再帰」原理にしたがう(自然数上の)関数の複雑かつ無限の操作である評価過程のコンパクト(すなわち簡潔で「有限的」)表現を得るとともに,既知のコンパクトな表現が再帰関数の計算可能性(停止性)も極限再帰関数の停止性も同時に表現することを利用して、極限再帰関数の評価過程を計算と見なしえることを整理し,これらの研究を発展させた. 2. 人間の思考についての哲学的分析.人間の推論は,論理的側面だけでなく価値判断を含む.実験哲学におけるのKnobe Effectの研究は,客観的判断(行為が意図的であるか否か)と主観的判断(行為が社会に対して及ぼす効果の善悪)の分解についての直感が正しくないことを示唆している.この問題意識に従って、Knobe効果の実験経済学実験の分析を進めた。その結果,Knobe効果は、経済実験でも確かに存在するが、結果の平等と既得権の保存というもっと強力な原理が十分に働かないときの副次的原理であることを発見し,国際会議で報告した. 3. 個々の人間の意思決定の相互作用を分析した. 進化ゲーム論的分析とマルチ・エージェント・シミュレーションによる分析、それぞれの長所・短所を、対象となる社会現象毎に議論した.特に,相手の協力度を見て協力するかどうかを決定する戦略が社会ネットワーク上で広がるかどうかについての進化ゲーム的接近に基づく計算機実験,およびゲームの利得構造が集団内の階層構造と協力形態に与える影響の実験について査読雑誌に報告した.
|