研究概要 |
平成22年度は所得税の累進性について以下のような分析を行った.既存研究では資本所得と労働所得を分けずに所得税の累進性と内生的な経済変動の発生頻度の関係を分析しているが,私の研究ではそれら所得税を明示的に労働所得と資本所得に対する税に分割して動学分析を行った.分析結果は2つの所得税の累進性と経済の不安定性の発生頻度の関係はパラメータの広い範囲で異なった影響を及ぼしうることが示され,よってそれらを分けて分析することの重要性が確認された.この論文は現在,レフリー性の学術誌へ投稿中であり,エディターからの返事を待っているところである 2つ目の研究内容として金融市場の発展の度合いと貧困の罠に経済が陥ってしまう必然性の関係を考察した.金融発展の度合いと経済のパフォーマンスの関係は実証研究などにより明示的な正の関係が成り立っていることが確認されているが,私の研究では理論的にその関係を考察している.もちろん既存研究でもそのような関係を理論的に分析した論文はいくつか存在するが,私の研究は金融発展と動学的な安定性の関係に着目し,経済が貧困の罠に陥ってしまう可能性と金融発展の関係を理論的に証明したところに特徴がある.結論は金融発展の度合いが小さい経済ほど,いくつか存在する定常均衡のうちの低位の均衡に経済が陥って抜け出せないことが示された.なお,この論文はJournal of Economic Dynamics and Controlというレフリー制の経済ジャーナルへ掲載することが決定している
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