研究分担者 |
阿比留 正弘 福岡大学, 経済学部, 教授 (20175897)
今泉 博国 福岡大学, 経済学部, 教授 (30151666)
鍵原 理人 福岡大学, 経済学部, 准教授 (70352226)
米田 清 福岡大学, 経済学部, 教授 (90320267)
渡辺 淳一 福岡大学, 経済学部, 教授 (40230966)
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研究概要 |
本研究の目的は,逐次手番の囚人のジレンマにおいて非協力情報が伝わる場合に理論的に存在する2つの均衡,協力均衡と非協力均衡について,実際の被験者によってそれらの均衡戦略がどのように採られるか,また,選択の違いはどこから生じるかを明らかにすることにある.平成22年度は,被験者を使った実験を10回(総被験者数約450人)行い,21年度に行ったstrategy methodによる実験を利得関数における非協力の誘因を段階的に変化させて追試した.さらに,21年度の実験で自由記述によって選択理由を回答してもらった結果,協力均衡戦略を採る被験者と非協力均衡戦略を採る被験者の間で違いが見られたので,これを検証するために,実験の後,被験者に選択理由を列挙した質問紙に回答してもらった.結果は,以下の3つに要約される. 1.非協力の誘因が一定の範囲(大き過ぎることも小さ過ぎることもない)にある場合には,非協力情報が伝えられることにより協力の選択は有意に増加する. 2.協力をとる被験者の割合は,非協力情報が伝わる場合と同時手番の場合のどちらにおいても非協力の誘因の増加に対して単調に減少する. 3.協力均衡戦略を選択する人々と非協力均衡戦略を選択する人々の選択の違いがどこからくるかは,質問紙への解答からは明確には判らなかった.どちらにおいても相手は自分と同じ行動を選ぶと予想するようであり,それが選択の違いとなっているようである. 1と2の結果は,非協力の誘因と協力の実現の関係を明らかにした重要な結果である.3の結果は,均衡戦略の選択の要因について主観的予想の違いを暗示するものであるが,データのさらなる検討によってより精密な分析が必要である.
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