研究課題/領域番号 |
21530185
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研究機関 | 仙台大学 |
研究代表者 |
大和田 寛 仙台大学, 体育学部, 教授 (30177026)
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研究分担者 |
川村 哲也 神奈川大学, 経済学部, 准教授 (60367258)
久保 誠二郎 東北大学, 大学院・経済学研究科, 博士研究員 (80400216)
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キーワード | 経済思想史 / 日本資本主義論争 / 19920年代 / 大正デモクラシー |
研究概要 |
「11.現在までの達成度」で、述べるように、「3・11の東日本大震災」後の1年ということで、平成23年度だけを切り取って、その研究成果を述べる状況にはない。ここでは、22年からの2年間について報告させていただく。 もともと本研究は、従来の日本の社会科学史の研究は、(1)1930年代の研究(とりわけ日本資本主義論争史)が中心であったこと、(2)20年代については、河上肇研究に偏重していること(3)理論史的研究が中心で、文献史的書誌的視野がほとんどないこと、に対する反省から出発している。そのことから、1920年代に遡り、河上以外の社会科学者に光を当て、文献的には、当時刊行された『講座』類・雑誌をも、分析の対象にすることを目指した。 「交付申請書」にも述べたように、当該時期が東大・京大の経済学部の創立期であり、また大原社会問題研究所の設立とも重なることは、認識していた。しかし研究の進展の中で、当時の社会科学の展開・普及を、特に出版物(講座類や雑誌)の刊行といった文脈で見ていくと、大原社研の位置づけ、その中心である高野岩三郎及びその弟子の森戸辰男・権田保之助等について、再検討する必要を感じるようになってきた。とりわけ森戸については、戦後の文部大臣・中教審会長のイメージが強いが、改めて20年代の社会科学者としての森戸は、再検討に値すると思われる(その論文を準備していたが、震災で中断している)。そのことで、大原社研のメンバーが積極的にかかわった当時の『社会問題講座』や『社会科学講座』や雑誌『我等』『社会科学』も、新たな視点から社会科学文献史上に位置づけることができるものと考えている。 また研究開始当初はあまり具体的なイメージを持っていなかった、当該期の社会科学と大正デモクラシーの関係についても、新たな構想を持つにいたった。従来、大正デモクラシーと言えば、吉野作蔵との関係で、あるいは下からの農民運動・労働運動(そして米騒動)との関係で論じられることが多い。つまり政治学や運動史の視点である。しかし、森戸や福田徳三のいう「生存権」概念を媒介にして、社会科学の視点からも、大正デモクラシーを見ることができると、考えるに至った。
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