研究概要 |
本研究の目的は、ベイズ的な統計理論・方法を基盤とした、経済成長の要因分析法の開発とその応用にある。本研究では、全要素生産性(total factor productivity, TFP)と産出量の要素弾力性を時変パラメータとみなす動的生産関数モデルを構築し、平滑化事前分布を用いたベイズ法でモデルの推定を行う。こうした試みによって、TFPと要素弾力性の詳細な動きが把握可能となり、従来の研究で見逃されていた新たな知見の獲得が期待できる。 平成21年度は、これまでの研究成果を踏まえたモデルの一般化・精緻化および推定法の改善作業を中心に行った。また、我々の提案アプローチを日本、中国、台湾、アメリカの時変構造の分析に応用した。本研究は、成長会計や成長回帰分析など既存の生産関数アプローチにおけるいくつかの問題点を克服した先駆的取り組みであり、経済成長の定量的分析の理論・方法の発展に貢献するものといえる。平成21年度における研究成果は、日本地域学会、日本経済政策学会、The 3rd ACE International Conference、The 5th International Conference on Informationなどで報告された。また5編の論文がそれぞれ「Journal of Economic Research」、「The Empirical Economics Letters」、「Information」および「システム制御情報学会論文誌」などの経済学や情報学関連の国際・国内学術雑誌に投稿した。その中の3編が平成21年度中に出版され、他の2編もすでに査読を通して採用決定となっており、平成22年度中に出版される予定である。
|