研究の目的は、空間誤差モデルについて、実験的・経験的な分析を行うことで、推定や予測の精度を比較することにある。このモデルは、横断面データを用いる場合に撹乱項が関係し合う可能性を考慮しようとするものである。本年度の研究実施計画では、線形モデルに関して経験的な分析を行うことにしていた。不動産価格または人口密度の分布を取り上げて先行研究をサーベイしたところ、いくつかの問題に対して実験的な検討を加えておかなければならないことが明らかになった。第1の問題は、予測サンプルに含まれる情報を利用することが推定精度を高めるか否かということである。既存研究は肯定的な見方を示している。第2の問題は、被説明変数が変換されたモデルにおいて被説明変数の予測精度を確保するためにはどうしたら良いかということである。既存研究は精度が低い予測量を採用している。そこで、モンテ・カルロ実験やプートストラップ実験を行うことにした。その結果、予測サンプルに含まれる情報が役に立つ可能性は低いことと漸近的に不偏な予測量が高い精度を有することがわかった。これらの知見については、それぞれ、英語論文にまとめてディスカッション・ペーパーを作成し査読付雑誌に投稿することで、評価を受けるようにした。しかしながら、実験的な検討を加えておかなければならない問題は残されている。次年度には、それらを扱ったうえで、線形モデルに関して経験的な分析を行うことになる。
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