研究の目的は、空間誤差モデルについて、実験的・経験的な分析を行うことで、推定や予測の精度を比較することにある。このモデルは、横断面データを用いる場合に撹乱項が関係し合う可能性を考慮しようとするものである。本年度の研究実施計画では、2つの目標を設定していた。第1の目標は、昨年度までに投稿してきた実験的な3つの論文について、文献のサーベイを拡充したり実験を追加したりしたうえで、内容を修正し、査読付雑誌に採用されるよう努めることである。これらの論文は、線形モデルに関して、それぞれ、予測サンプルに含まれる情報を利用することが推定精度を高めるか否か、被説明変数が変換されたモデルにおいて被説明変数の予測精度を確保するためにはどうしたら良いか、先行研究に見受けられるモデルに優るものを見出すことはできるか、といった問題を扱っている。最初の2つの論文については、採用されることになった。最後の論文については、査読が行われていて、採用されるには至っていない。第2の目標は、非線形モデルに関して実験的な分析を行うとともに、線形モデルや非線形モデルに関して経験的な分析を行うことである。実験的な分析では、推定と予測の方法を検討したうえで、いろいろな非線形モデルを提案し、モンテ・カルロ法を用いて、特定なモデルを成立させる人工的なデータを作成し、すべてのモデルを当てはめることで、推定や予測の精度を比較することにした。経験的な分析では、現実的なデータを収集して線形モデルや非線形モデルを当てはめることにした。推定と予測の精度は方法に依存してモデル間で異なる可能性があるという知見については、英語論文にまとめて査読付雑誌に投稿することで、評価を受けることにしている。
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