平成22年度は、ミクロデータに基づいて人々の貧困状況と幸福感や主観的社会的ポジションの関係についての実証分析を進めること、さらに、貧困状況の推移について経済的要因だけでなく、他の社会的要因との関係からに実証分析を行うことを計画していた。 そこで、家計の貧困と主観的社会的ポジションに関する計量的分析を行い、論文(論文(1))にまとめて外国雑誌に投稿した。また、家計の生活満足度の推移に関する分析を行い、論文(論文(2))作成中である。さらに、既に投稿していたベイジアンの順序プロビットモデルの手法によって各国の主観的幸福の分布の推移を調べ、その不平等を計測した論文(論文(3))の修正を行った。 論文(1)では、日本版General Social Surveysを用いて、貧困や所得など社会経済的要因と主観的社会的ポジションの関係についてベイジアン多変数プロビットモデルを用いて計量分析を行った。論文(3)において提案した"regret"の分布が、貧困線より上に位置する家計と下に位置する家計で異なることなどを示した。論文(2)では、家計経済研究所のパネルデータを用いて、家計の生活満足度の経年的推移について調べた。生活満足度の階層移動という視点から、推移行列を推定し、5種類の階層移動尺度を利用して分析を行っている。論文(2)で提案した主観的幸福の不平等を測る指標"regret"を利用し、主観的社会的ポジションの不平等を"regret"を用いて測った。これを貧困線より高い所得の家計、低い家計を比較することにより、貧困状況の違いによって"regret"の大きさが異なることを明らかにした。
|