研究概要 |
平成23年度は,前年度に引き続き,ミクロデータを用いて家計の貧困に関わる社会的経済的要因の実証分析を行うごとを研究目標としていた。そこで主に以下の3点の作業を行った. 1.前年度から続いていた『消費生活に関するパネル調査』(家計経済研究所)を利用した生活満足度の階層移動と家計の貧困状況との関係をついての研究を進めた.そして生活満足度の階層移動の分析についてディスカッションペーパー(論文(1))を作成した,そこでは,1994年から2006年までの家計の生活満足度の階層移動について,5種類の階層移動尺度を使って推定した.そして,期間の後半に生活満足度が低下する家計の割合が高くなること,階層移動尺度の推定値は尺度の種類によって変化に違いがあること,また,階層移動尺度によっては推定値が妥当な範囲に入らないものがあることなどを示した. 2.家計の貧困に関連が強いと考えられる家計の労働供給を規定する要因を分析するための文献研究を進めた.家計の労働供給において,賃金など経済的要因だけでなく,労働の満足度を規定する社会的要因の影響が重要であることは心理学や社会学など経済学以外では指摘されている.そこで,そうした側面を含んだ経済モデルの開発することが必要であると考えられる.今後,モデルを作成し,実証分析を行うことを計画している. 3.前年度作成して投稿していた,社会的地位について持つ圭観的な認識が,個人の貧困状況などの経済的要因,年令,性別,教育水準などの人口学的・社会的要因とどのような関係があるかを分析した論文(論文(2))に対するレフェリーコメントに答える作業を行った.新たな知見を加えた.これにより,異なる貧困線を用いて貧困状況の判定を変化させても得られた結果に変化が生じないことなど,結果の頑強性を示すことができた.
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