グリーン商品は、消費者に直接的な利益を生むとは限らないが、環境保護に効果をもたらす。これらはエコ商品とも呼ばれ、カーボンニュートラルの航空会社によるフライトや持続可能な森林からの木材で作られた家具などが例として挙げられる。グリーン商品の利用は単に環境貢献のためのものという意見がある。本研究プロジェクトは欧州の研究者と協力し、経済的実験を通じて消費者がグリーン商品を購入する理由の解明を目的とするものである。 平成21年度に学生およびその家族を対象に2実験を実施した(平成22年度に繰り越しされた金額を含む)。第一の実験では対象者に予算を与え、その予算をグリーンまたは非グリーン商品の購入、さらに環境関連の取り組みへの寄付などの利他的な目的に使用することを可能とした。その結果、グリーン商品を購入する機会を与えた場合、環境関連の取り組みへの寄付総額が減少する傾向が認められた。この実験では、商品の有する環境への貢献度がわずかである場合でも、対象者の多数がグリーン商品を選んで購入している。しかしこれらの対象者がグリーン商品を購入した場合、環境関連の取り組みへの寄付行動は行わなくなった。これは、実際は利己的でありながらも道徳的な印象を与えたいという、道義的な思惑によるものと考えられる。グリーン商品の購入ができない場合と比較すると、環境関連の取り組みへの寄付総額は全体的に低い結果となった。第二の実験では、夫婦を対象に予算を与えた。この実験では個人利得を目的とする利己的な予算の利用、あるいは社会的利益をもたらす利他的な利用を可能とした。その結果、夫婦は配偶者との行動においてより利己的な行為をとることが認められた。グリーン商品のもたらす環境的な有益性は、商品利用ができない場合と比較すると、わずかな状況の変化によって低下し得る不安定なものであることが両実験の結果から示唆される。
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