研究概要 |
平成21年度に作成した中国の環境改善を行う具体的な方法論を含む論文『低炭素経済実現のためのビジネスモデル』を、同分野の研究者(中国、欧州、米国の各大学)との交流で得た知見をもとに全面改訂を行った。その要諦は、2009年に日本で実施されたエコポイント制度が予想を超えて有効に機能したこと。また、同制度が地上デジタル放送への移行という、規制と結び付いたケースが、より効果的に作用したことを勘案し、規制とインセンティブを組み合わせた経済モデルが、実際に機能した事実を踏まえ、更に、同様の効果が現れた1973年第一次オイルショックより約30年間にわたる日本の官民を挙げての継続的な省エネ運動に注視し、(1)一般消費者の環境マインドの高揚が省エネや環境改善に対するコンセンサスの形成に繋がった(2)中長期的な規制の必要性(3)具体的なインセンティブ以上を組み合わせた経済モデルに修正した。 改訂後、実際に中国に於いて巨大な潜在需要があり、日本の技術を渇望する「水浄化」の分野に絞って、実証実験を行う前提となる、日本における実証実験の為に三菱地所を中核とする三菱グループの皇居のお堀の浄化計画や次世代ビルデイングプロジェクトと連携。水浄化のKeyとなる微細気泡技術(ナノバブル生成装置)を保有する協和機設社と連携して、具体的なビジネスモデルの設計と、そのビジネスモデル実施を可能にする経済モデルの策定を行った。ここで、要素技術のシステム化とビジネスモデル設計を同時並行的に行う重要性を認識した。一方で、中国への技術移転に際し、例えシステム化を行っても知財の保全は容易でないことが認識できた。 一方、前述の論文を9月23,24日長崎大学にて開催された環境経済・政策学会にて発表。千葉商科大学伊藤教授、上智大学有村教授、京都大学佐藤准教授、東北大学明日香教授等と意見交換を行い、特に官民のコンセンサス形成に対する方法論について議論し知見を得た。この知見をもとに、10月20~22日、韓国忠南大学にて開催されたNAMEJC 2011 国際会議に於いてさらに改訂を行った論文を発表。忠南大学韓仁洙教授、ロシアPlekhanov Russian 経済大学Alexander教授、Jetro大橋博士、神戸大学國分教授等と意見交換を行い、創出した経済モデルの有効性に関して肯定的な感触を得た。 これら学会における知見と、三菱地所をはじめとする企業グループとの意見交換から得た知見を元に、同論文を再編、改訂した論文を2012年1月20日~21日、明治大学にて開催された日本学術振興会・アジア研究教育拠点事業国際会議に発表。中国西南交通大学胡倍教授、武漢大学斉紹洲教授、南開大学李凱教授、韓国忠南大学文煕哲教授等と意見交換を行った。この中で、武漢大学斉教授及び、南開大学李教授より実際に中国で試験的に実施しているペットボトル回収の事業に於いて、本論文のモデルとほぼ同じの、即ち、規制とインセンティブを組み合わせた経済モデルを実行し、成功例について開示があり、本経済モデルの有効性に関し確証を得ることができた。
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