研究概要 |
東アジアに特徴的である垂直的な貿易構造の下で,自由貿易協定(FTA)を締結することが加盟国・非加盟国の経済厚生にどのような影響を与えるのかを理論的に考察して,論文[1],[2],[3]を作成した。[1]"Bilateral Free Trade Agreement in Vbrtical Trade Structure"では,中間財輸出・最終財輸入の1国と中間財輸入・最終財輸出の2国からなる3国モデルを用いて,FTAの締結によって,非加盟国の厚生は低下するが,加盟国の厚生は,中間財・最終財企業数や初期の関税率に依存して,増加したり減少したりすることを示している。また,非加盟国を犠牲にしないようなFTAを締結できることも示している。この論文は,研究分担者の倉田によって日本経済学会で報告され,Trade Liberalization and Protectionismの1章となる。[2]"Vertical Trade and Free Trade Agreements"では,[1]と同様なモデルを用いて,FTAが加盟国・非加盟国の関税や経済厚生に与える効果に関して分析している。[1]では各国の関税は外生的に与えられたが,この論文では関税は内生的に決定される。この論文は,研究分担者の柳瀬によってAsia Pacific Trade Seminars 2009で報告され,また,海外学術誌に投稿されて,現在審査中である。[3]"Free Trade Agreement and Vertical Trade with a Manufacturing Base"では,中間財輸出・最終財輸入の2国と中間財輸入・最終財輸出の1国からなる3国モデルを使って,FTAの効果を分析している。この論文は,研究代表者の川端によって日本国際経済学会で報告され,現在論文の修正が行われている。我々の研究は,東アジアにおけるFTA戦略を考える上で十分な貢献を果たすことが期待できる。
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