研究概要 |
平成21年度には以下の研究成果が得られた.まず,森林や水産資源等の再生可能天然資源に関する文献を中心に,当該分野の研究動向のサーベイを行った.また,水産資源等の専門家や,国内の森林管理団体,水産市場関係者等へのヒアリングを行い,資源管理の現状と問題点に関する情報収集を行った.その結果,漁業補助金に関するWTO交渉では,様々な漁業補助金に対する意見の対立が明らかになった.また,水産資源の貿易に関して,ロシアが導入した密漁対策としてのカニの輸出制限措置の影響が国内市場に広がっている実態が明らかになった.さらに,木材の情報開示に関して,地元産であることや品質面での情報開示には積極的であるものの,持続可能な森林経営につながる森林認証への取り組みにはばらつきがあることが明らかになった. これらの情報を踏まえて,まず漁業補助金の効果に関する理論分析を行った.その結果,漁獲能力には直接関係しない補助金に関して,国内の資源管理と労働市場の条件によって,補助金を削減する効果が著しく異なる可能性があるという結果が得られた.条件次第では,目的に反して補助金削減によって漁獲量が増加する可能性もありうることを理論的に示した.こうした点について従来特に明示的に示されてきておらず,新たな知見となる.WTO交渉においてもこの点を考慮する必要がある. また国際共有資源としての漁業資源を巡る各国の管理と,違反に対する制裁措置としての貿易制限措置に関する予備的な理論分析を行い,貿易制限措置が資源管理を促すという暫定的な結果を得た.これについては次年度さらに本格的な分析を行っていく計画である.
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