平成21年度は、三浦(2008)[学術振興野村基金研究成果報告書「公共部門の戦略的アウトソーシングに関する経済分析、3章]に依拠しながら公設公営型(従来型)と公設民営型(指定管理者制度)の医療モデルを構築し、理論的観点から比較検討を行った。まず、公設公営型のケースでは、病院経営者が公務員であるため、所属機関や議会との関係から、病院経営に関する裁量性が限定されており、医療サービスの品質を改善する投資やコスト削減のための投資が他の公立病院の平均水準に固定されているものと仮定した。この場合、社会厚生を最大化する均衡での病院の建設投資水準は、コスト削減のための平均的投資水準、割引因子および医療サービスのシャドーコストに依存し、コスト削減のための平均的投資水準や割引因子が共に大きく(小さく)、医療サービスのシャドーコストが小さい(大きい)ほど大きく(小さく)なることが明らかにされた。加えて、ファーストベスト水準に比べ、病院の建設投資水準は過小となることも示された。 次に、公設民営型のケースでは、病院の建設投資は公共部門が決定するもののコスト削減のための投資や医療サービスの品質を改善するための投資は、病院当局が自由に決定できるものと仮定して、各均衡投資水準を求めた。その結果、コスト削減のための投資が平均水準を上回る場合には、病院の建設投資は公設公営型のケースより大きくなることが明らかになった。さらに、医療サービスの品質を改善するための投資を1単位増加させたときの社会的便益の増加が、医療費用の増加を上回る場合には、ファーストベスト水準に比べ、医療サービスの品質を改善するための投資は過大、コスト削減のための投資及び病院の建設投資は過小となることが明らかにされた。
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