研究概要 |
平成22年度は、公設公営型(従来型)、民設公営型(PFI,BTOタイプ)、民設公営型(PFI,BOTタイプ)の医療PFIモデルをBenett and Iossa(2006)に依拠しながら構築し、特に医療サービスと介護サービスを同一プロジェクトの下で連携して供給する場合、各サービスの品質や供給コストの面で補完性が存在する状況を理論的に検討した。主要な分析結果は以下の通りである。BOTタイプの下では、医療施設及び介護施設に対する投資が社会的観点からみた最適投資水準を常に下回るのに対し、BTOタイプの下では、施設整備費用の削減効果が強く作用する場合、最適投資水準を上回る過大投資となる可能性が存在することが明らかにされた。また、従来型の下で連携プロジェクトを実施する場合、BTOタイプよりも設備投資が常に促進されることもわかった。 さらに、公設公営型(従来型)において、これまでわが国で行われてきた医療サービスと介護サービスを独立して供給するケースとの比較分析も試みた。その結果、医療・介護連携による利便性改善効果や施設整備費削減効果がそれほど強く働かない場合、BTOタイプが従来型よりも効率的な投資が実現される一方、施設整備費削減効果が強く働く場合、BOTタイプが従来型に比べ、効率的な投資が実現されることが判明した。 以上の分析から、医療・介護事業を連携して行う場合、連携によって生じる複数の外部効果の程度をできるだけ正確に予測した上で、効果的な投資が実現される手法を適宜選択することが望ましい、といえる。
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