研究概要 |
平成23年度は、PFI事業として医療事業と介護事業を連携して行うことによりシナジー効果が生じるケースをBennett and Iossa(2006)モデルを修正することにより,定式化し考察した.主要な結果は以下の通りである. (1)医療・介護事業をそれぞれ独立に行う場合,ハード投資に関してBTOはBOTよりは常に過大となるが,ファーストベスト水準,従来型及びDBOに比べ,過小・過大いずれのケースも生じうる.また,ソフト投資に関しては,BTOは従来型及びDBOと同一水準になり,ファーストベスト水準よりも過小となる. (2)医療・介護事業の連携によりシナジー効果が生じる場合,各事業者はシナジー効果の一部しか考慮せずに投資を決定するため,ファーストベスト水準の乖離幅は医療・介護を独立して行うケースでのセカンドベスト水準との乖離幅よりも拡がる可能性が出てくる.その意味で,シナジー効果が存在するケースでは,相対的非効率性が増幅する危険性が存在する. (3)ハード投資に関して負のシナジー効果が生じる場合,BTOや従来型方式において過大投資が是正され,ファーストベスト水準に近づく可能性が出てくる. 上記の分析モデルを多少修正することにより,医療施設とリハビリ施設あるいは医療と高齢者居住施設などの複合施設間の連携に応用可能である.その意味では,上記の分析結果はある程度の頑健性を有しているといえる.よって,今後の公立病院の改革にあたっては,財政赤字や少子・高齢化問題を念頭に置き,複合施設間におけるシナジー効果の多寡などにも十分意を払い,対応策を検討する必要があることが平成23年度の研究結果から示唆される。
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